NAS と言えば日本では Synology が圧倒的なシェアを持っていますが、QNAP も古参のメーカーで、特にハードウェア性能とアプリの自由度で根強い人気があります。編集部では Synology DS1522+ と QNAP TS-464 を両方運用していて、それぞれの良し悪しを実感しています。

QNAP の初期設定は、Synology に慣れている人ほど「操作の流儀の違い」で戸惑います。やっていることはほぼ同じなのですが、UI と用語が変わるので、ガイドとして整理しておきます。

NAS の仕組み(QNAP も Synology も基本は同じ)
NAS の仕組み(QNAP も Synology も基本は同じ)

QNAP と Synology の違い

ざっくり言うと、Synology は「画面が綺麗で迷わない代わりに、できることを絞っている」。QNAP は「自由度が高く速いが、UI がやや雑多」という性格です。Docker やコンテナ運用、HDMI 直出力で TV につなぐといったマニアックな使い方は QNAP の方が得意です。一方、家族みんなで写真共有・スマホアプリで快適に、という用途では Synology のアプリ群(Synology Photos、Drive、Note Station)の完成度が頭ひとつ抜けています。

「写真と動画を家族で管理したいだけ」なら Synology が無難。「自分で色々試したい」「Plex メディアサーバーをガチで使いたい」なら QNAP。これが編集部の基本見解です。

用意するもの

  • QNAP 本体(TS-264 / TS-464 / TS-664 など)
  • 対応 HDD(NAS 用が安心。Seagate IronWolf / WD Red Plus 推奨)
  • LAN ケーブル(2.5GbE 対応モデルなら Cat6 以上推奨)

初期設定の流れ

電源を入れて、PC のブラウザで start.qnap.com または NAS の IP に直接アクセス。Qfinder Pro という QNAP 公式ユーティリティを使うと、ネットワーク上の QNAP を自動検出できます。Synology の Synology Assistant に相当するアプリです。

ウィザードに沿って管理者アカウントを作成し、ストレージプールを構成します。RAID は用途に合わせて選びますが、2ベイなら RAID 1(ミラー)、4ベイなら RAID 5、5ベイ以上なら RAID 6 が一般的です。RAID の違いはRAID の図解を参照してください。

RAID 0/1/5/6/10 の違い
RAID 0/1/5/6/10 の違い

その後、共有フォルダの作成、ユーザーアカウントの追加、QuFTP や QSync(ファイル同期)の有効化と進みます。QNAP は機能が多いぶんメニュー階層が深いので、最初は「コントロールパネル → 権限設定 → 共有フォルダ」のような正規ルートを覚えておくと迷いません。

QTS / QuTS hero の選択

QNAP には QTS と QuTS hero の2つの OS があり、後者は ZFS ベースで重複排除・スナップショット・高度なデータ整合性チェックが使えます。家庭用なら QTS で十分、業務利用や大量データの長期保管なら QuTS hero が向きます。インストール時に選択できますが、後から変更すると初期化が必要なので最初に決めておくのが無難です。

つまずきやすいポイント

QNAP の管理画面は機能が多く、初心者には「どこに何があるか」が分かりにくい印象を持たれがちです。実際、編集部でも最初の数日は迷いました。Synology の DSM が「家電のリモコン」だとすれば、QTS は「業務用機器のコンソール」に近い印象です。

もうひとつ、QNAP は過去にランサムウェア「QLocker」「Deadbolt」などの標的にされた経緯があります。外部公開する場合は、myQNAPcloud Link 経由・2要素認証必須・自動アップデート有効の3点を最低限守ってください。詳しくはランサムウェアからデータを守る方法で書いています。

オフサイトバックアップの設定

QNAP には Hybrid Backup Sync(HBS 3)という標準アプリがあり、これで Backblaze B2、AWS S3、Google ドライブなどへ自動バックアップを取れます。Synology の Hyper Backup に相当する機能で、暗号化・スケジュール・世代管理に対応しています。NAS のデータをクラウドへ控える設定が完了して、はじめて 3-2-1 が成立します。RAID を組んだだけでは終わりではありません。

まとめ

QNAP は「自由度と性能で選ぶ NAS」です。初期設定の流儀が Synology と違うだけで、考え方の本質は同じ。RAID 構成 → 共有フォルダ → クラウドへのオフサイトの3ステップで 3-2-1 を完成させてください。NAS を含む構成全体の最適解は無料の構成診断で確認できます。