NAS を買うか迷っている方からよく聞かれるのが「電気代どれくらいかかるんですか?」という質問。これは意外と地味な論点ですが、10年スパンで見ると無視できないコストになります。

編集部の Synology DS220+ と DS1522+ で実測したデータをベースに、NAS の電気代の現実を整理します。

NAS の消費電力の目安

Synology の公式仕様(2026年時点参考)では:

  • DS220+(2ベイ・小型):アクセス時 17W、HDD ハイバネーション時 5W
  • DS423+(4ベイ):アクセス時 30W、ハイバネーション時 11W
  • DS1522+(5ベイ):アクセス時 50W、ハイバネーション時 20W
  • RS822+(ラックマウント・8ベイ):アクセス時 70W、ハイバネーション時 25W

実測すると、家庭用途では「アクセスがない時間が大半」なので、平均消費電力はカタログ値より低くなることが多いです。編集部の DS220+ は、ワットチェッカーで測ると平均10W前後でした。

電気代の試算

電気料金を1kWh = 31円(2026年時点の東京電力従量電灯B 第2段階を参考)で計算します。

DS220+ で 24時間稼働の場合(平均10W想定):

  • 1日:0.24kWh × 31円 = 約7.4円
  • 1ヶ月:約222円
  • 1年:約2,700円
  • 10年:約27,000円

DS1522+ で 24時間稼働(平均30W想定):

  • 1日:約22円
  • 1ヶ月:約660円
  • 1年:約8,100円
  • 10年:約81,000円

家庭用 2ベイ NAS なら、年間2,000〜3,000円程度。中規模 5ベイでも年間6,000〜8,000円程度。クラウドサブスクと比べると、年間数千円のオーダーで収まります。

電気料金プランで意外と変わる

電気料金プランは契約形態によって kWh あたりの単価が変わります。深夜電力プラン(夜間が安いプラン)を契約していれば、NAS の重い処理(夜間バックアップなど)を深夜に走らせることで、電気代をさらに圧縮できます。

逆に、再エネ賦課金や燃料調整費が加わる時期は、計算より2〜3割高くなることがあります。

クラウドサブスクと比較すると

Google One 2TB:月1,300円 = 年15,600円 = 10年156,000円

DS220+ の電気代 10年分:約27,000円(+NAS本体・HDD・クラウドへのオフサイト追加)

電気代だけ見ると NAS は安いですが、機材費とオフサイトのクラウド代を加えても、長期では NAS の方が経済的になりやすいです。詳細は10年総コスト比較で書いています。

節電のコツ

NAS の電気代を抑えるためにできること:

①HDD ハイバネーションを有効化

Synology DSM やQTS には「HDD ハイバネーション」機能があり、一定時間アクセスがないと HDD のスピンを止めます。これで HDD 自体の消費電力がほぼゼロになり、待機電力(SSD・CPU・RAM だけ)に減ります。

ただし、頻繁にスピンアップ/ダウンを繰り返すと HDD の寿命が縮むという議論があり、編集部では「30分以上アクセスなしでハイバネーション」設定にしています。

②スケジュール電源 ON/OFF

夜間や旅行中は NAS の電源を完全に切る運用も可能です。DSM のスケジュール電源で、自動 ON/OFF が組めます。ただし、夜間バックアップを走らせる予定なら、その時間帯は ON のままにする必要があります。

③省電力モデルを選ぶ

CPU が消費電力低めの NAS(Intel Celeron / ARM 系)を選べば、本体消費電力が抑えられます。性能を求めなければ、エントリー機種の方が電気代では有利です。

ファンの音

電気代と並んで、NAS の地味な論点が「ファンの音」です。リビングや寝室に置くと気になることがあります。Synology の家庭用モデルは比較的静かですが、QNAP や TerraMaster は同価格帯でファンノイズが大きめのモデルもあります。

設置場所を選び、書斎や納戸など人がいない場所に置けるなら、これは問題になりません。

編集部の運用

編集部の DS220+ は24時間稼働、HDD ハイバネーション有効、夜間バックアップは22時〜6時の枠に集約。実測の年間電気代は約2,800円。これで 4TB の家族写真と業務文書がいつでもアクセスでき、3-2-1 ルールも満たせるなら、電気代として全く惜しくありません。

まとめ

NAS の電気代は、家庭用なら年間2,000〜8,000円のオーダー。クラウドサブスクと比べて十分小さく、長期コストの判断軸にはほぼ影響しません。むしろ機材費の方が大きな比重を占めます。総合比較は10年総コスト比較で確認してください。