「無料15GB を5社で組み合わせれば 75GB だ」というのは、クラウド節約術として SNS でよく見かけます。実際にやっている方も多いでしょう。

ただ、編集部の見解としては、「無料枠の総合計を増やす」ことは目的にしない方が安全です。容量より、3-2-1 ルールを満たすための「役割分担」として複数クラウドを使うのが、本質的な賢い使い分けです。

複数クラウドの役割分担
複数クラウドの役割分担

「容量稼ぎ」と「役割分担」の違い

無料 15GB を5つのクラウドに分散して 75GB 持つのは、容量だけ見れば合理的に見えます。しかし運用面では次のデメリットがあります。

  • 5箇所に分散したファイルのどこに何があるか分からなくなる
  • 各サービスの無料条件が変わると、データが消える可能性
  • 同期アプリを5つ起動すると PC・スマホが重くなる
  • バックアップとしての要件(別媒体・別場所)を満たさない可能性

特に最後が重要で、「Google ドライブ無料 + Gmail のメール容量 + Google フォト」のように同じ Google アカウント内で分散させても、Google にトラブルがあれば全部一緒に消えます。3-2-1 の「異なる媒体・異なる場所」を満たさないと、容量だけ増えても安全性は上がりません。

役割分担で複数クラウドを使う考え方

編集部のおすすめは、容量稼ぎではなく機能と役割で複数クラウドを使い分けること。

例えば次のような分業です。

  • Google ドライブ(無料15GB):業務 Docs・Sheets を使う場所。共有しやすい。
  • OneDrive(Microsoft 365 1TB):Office を使う作業環境。
  • Synology NAS:家族写真・動画の母艦(主役)。
  • pCloud Family(終身2TB):NAS のオフサイト控え。買い切りで固定費なし。

こうすると 3-2-1 ルールを満たしつつ、各クラウドの強みを活かせます。

大容量(10TB級)が必要な場合

家族の写真や動画が増え続けて 10TB クラスが必要になる方も最近は珍しくありません。この場合、汎用クラウドではなく次の組み合わせが現実的です。

  • NAS が主役:Synology DS1522+ + IronWolf 8TB x5 で実効20TB前後
  • オフサイト:Backblaze B2(1TB あたり月600円程度)で全データを夜間バックアップ
  • 重要データのみ別の場所:pCloud Family 2TB に家族写真の主要アルバムだけ

10TB のクラウドストレージサブスクを契約すると年間10万円超になります。NAS + Backblaze B2 の組み合わせなら、初期投資10万円台+月3,000〜5,000円程度に収まります。

同期型と非同期型を分ける

複数クラウドを使うとき、「同期型」と「非同期型(バックアップ用)」の役割を分けるのが鉄則です。

同期型(Dropbox・OneDrive・Google ドライブ)は普段使い。誤削除・ランサムウェアで全端末から消える可能性があるので、ここに「唯一の保管先」を置かない。詳しくはDropbox だけでは不十分な理由

非同期型(NAS のバックアップ・Backblaze B2・pCloud)は「過去の状態を残す」役割。同期されないので、誤操作が伝播しません。

運用が破綻しないコツ

複数クラウドを使うと、ファイルがどこにあるか分からなくなる「分散迷子」が起きがちです。次のルールを決めると整理できます。

  • メインの保管先を1つ決める(NAS など)
  • 他のクラウドはあくまで控え・特定用途と位置づける
  • メインに置く時に、自動で他にも複製される設定にする(手動コピーは絶対に忘れます)
  • 半年に1回、各クラウドの中身を棚卸しする

「どこに何があるか分からない」状態は、データが消えた時に気付けません。シンプルさが長期運用の鍵です。

無料枠の落とし穴

無料クラウドは便利ですが、無料の条件変更(突然の容量縮小・サービス終了・有料化)が起こり得ます。無料クラウドは危険?で詳しく書いていますが、重要データを無料枠だけに置かないこと。

まとめ

複数クラウドの使い分けは、容量稼ぎより役割分担として組むのが本質。3-2-1 を満たすことを最優先に、各サービスの強みを活かす配置にしてください。最適な組み合わせは無料の構成診断で確認できます。