編集部のメンバーが昨年手がけた4K案件で、SSDが1枚いきなり認識しなくなったことがありました。撮影から3日目、編集途中の素材です。RAW・ProRes・H.265 が混在するプロジェクトで、容量は実測 1.8TB。幸い NAS とクラウドに二重化していたので戻せましたが、もしローカルだけだったらと考えると今でもゾッとします。
動画クリエイターのストレージ設計が他職種と違うのは、「速い場所」と「安い場所」と「離れた場所」の3つを同時に持たないと回らない点です。1か所に集約する設計は、写真や書類なら成立しますが、4K以上を扱う動画では破綻します。
なぜ汎用クラウド1つでは足りないのか
写真1枚は数MB、書類は数百KB。ところが 4K ProRes 422 は1分でだいたい7〜8GB、半日撮影で軽く200GB を超えます。Dropbox や Google ドライブの2TBプランは、案件1本で埋まることが珍しくありません。さらにタイムラインのプレビューが詰まらないためには、回線速度では足りずローカルの NVMe SSD が必要です。「クラウドにすべて置けば安心」は動画では成立しないのです。
編集機(作業環境)に必要なもの
編集中の素材は内蔵 NVMe SSD に置きます。容量は使うコーデックで変わりますが、編集部の環境では Samsung 990 Pro 2TB を編集ドライブ、別 SSD をキャッシュ専用に分けています。AfterEffects や DaVinci Resolve はキャッシュが肥大化するので、編集ドライブと同じ SSD に置くと容量がすぐ枯渇します。
外付け SSD で運用する場合は USB 3.2 Gen2x2(20Gbps)以上が現実的です。Gen1(5Gbps)では 4K マルチカム編集でプレビューが止まります。
素材庫(完パケ・過去案件)
完成済みのプロジェクトと、よく使う素材アーカイブは NAS に集約しています。編集部で使っているのは Synology DS1522+ に Seagate IronWolf 8TB を5本、SHR(Synology Hybrid RAID)で組んだ構成。HDD 1本が壊れても継続できますが、ここで重要なのは「RAID はバックアップではない」という1点です。RAID の各構成の違いはRAID の図解で解説しています。
RAID は HDD の単発故障に強くなる仕組みであって、火災・水害・盗難・ランサムウェアでは NAS ごと失います。「RAID 5 組んだから安心」で済ませると、機器全損型の事故で完全に詰みます。
オフサイトの控え
クライアントワークでは素材消失=信用喪失です。完パケと納品済み素材だけでも、別の場所のクラウドに上げます。容量単価を重視するなら買い切り型クラウド(pCloud Family や IDrive Cloud など)が向きます。考え方はサブスク vs 買い切りで詳しく書いています。
やりがちな失敗
筆者が一番ヒヤリとしたのは「外付け HDD 1台に半年分の案件を貯めていて、落下で全損しかけた」事例です。当時は 3-2-1 ルールを意識しておらず、HDDが1台ある=バックアップだと勘違いしていました。ほかにも、編集中の素材を毎回クラウドに置いて作業が遅すぎる人、終わった案件を全削除して2年後の追加修正で困る人、RAID を組んだ NAS をリビングに置いて雷で全損した知人。どれも、起こりうるのです。
まとめ
動画は容量と速度を両立させる必要があるため、作業場所・保管場所・オフサイトを別々に設計します。SSD と NAS とクラウドの3層構成、これが現時点で編集部が落ち着いている形です。機材構成の例はクリエイター向け構成セットを、自分に合う組み合わせは無料の構成診断で確認できます。