日本は地震・台風・水害が日常的に起こる国です。2024年も能登半島地震があり、東日本大震災から十数年が経っても自然災害のリスクは消えていません。
データ防災は「災害時にデータを守る」だけでなく「災害時にデータにアクセスできる」ことも含めて設計するのが正解です。
災害でデータが失われる典型パターン
地震:本棚や机から HDD・NAS が落下して物理破損。落下高さによっては復旧不可能なレベルの破損。
水害:浸水で電子機器が完全に水没。HDD は内部に水が入ると、復旧は専門業者でも難しい。
火災:NAS や HDD の融解。プラスチック筐体は数百度で溶ける。
停電:NAS が突然電源断され、ボリュームクラッシュ。長期停電なら数日アクセスできない。
通信障害:災害時に Wi-Fi・モバイル回線が使えず、クラウドにアクセスできない。
このうち**「アクセスできない」は、データが残っていても実用上失っているのと同じ**です。災害発生から数日間、家族の連絡先・避難所情報・保険証書のスキャン画像にアクセスできないと、復旧が遅れます。
3-2-1 ルールが効く局面
3-2-1 ルールは、まさにこういう局面で効く設計です。
家の中の控え(NAS・外付け HDD)は災害でまとめて失われます。1つはオフサイト(別の場所)に置くが、災害時の生命線になります。
オフサイトの選び方
候補1:クラウドストレージ
最も簡単で現実的なオフサイト。pCloud Family・Backblaze B2・Google ドライブなど、データセンターは日本以外にあるサービスも多く、日本国内の地震・台風で同時に被災する確率はほぼゼロ。
ただし通信障害時にアクセスできない問題があります。「災害時にすぐ確認したい書類」(保険証・身分証のスキャン)は、スマホのローカルにもコピーを持っておく運用がおすすめです。
候補2:実家・親戚宅に外付け HDD
物理的に離れた場所に外付け HDD を置く方法。クラウドより安いですが、定期的に更新する手間と、保管先の安全性に依存します。
距離は最低 50km 以上、できれば異なる地域(関東 → 関西、関西 → 中部 など)が望ましいです。
候補3:銀行の貸金庫
重要書類のスキャンを SSD に入れて、銀行の貸金庫に保管する方法。年間 1〜3万円の費用がかかりますが、災害耐性は最高クラス。
ただし、災害時にすぐ取り出せないリスクもあります(銀行が営業できない期間が発生する)。
候補4:M-DISC を別の場所に保管
M-DISCは耐火・耐水に優れた光学メディアで、別の場所に保管しやすい性質があります。家族写真の本気の長期保管+災害対策として組み合わせる選択肢。
災害時のアクセスを確保する
データを守るだけでなく、災害時にアクセスできる準備も必要です。
①重要書類のスマホへのコピー
保険証・運転免許証・健康保険証・パスポート・年金手帳・銀行通帳の写真は、スマホのオフライン領域(Apple のファイル / Google ファイル のオフライン保存)に入れておきます。クラウドアクセスができなくても見られる状態を作ります。
②家族の連絡先のオフライン保存
連絡先アプリのデータがクラウド同期に依存していると、回線がないと使えません。災害時用に「家族の連絡先一覧」を紙に印刷して財布に入れる、というアナログ対策も有効です。
③避難所での充電手段
モバイルバッテリー(20,000mAh 以上)を常備。スマホが充電できれば、ローカルに保存したデータにはアクセスできます。
NAS 自体の災害対策
家の中の NAS も、設置場所で被害を最小化できます。
- 地震対策:低い場所に設置。家具の上に置かない。耐震マットを敷く
- 水害対策:1階より2階以上に設置(浸水リスク回避)
- 火災対策:延長コード経由ではなく直接コンセントに繋ぐ。発熱しすぎる配置を避ける
- 停電対策:UPS(無停電電源装置)を追加。瞬電・短時間停電からの保護
UPS は1〜2万円から導入できます。Synology や QNAP は UPS と連携して、停電時に自動でシャットダウンする機能があります。これだけでボリュームクラッシュ確率が大幅に下がります。
防水・耐火ケースという選択肢
外付け HDD を防水耐火ケースに入れる選択肢もあります。SentrySafe や ProtectFire のような小型防水耐火ケースは、家族写真を入れた HDD を物理的に守る最後の砦になります。
ただし、これだけで安心しすぎないこと。「ケースに入れているから大丈夫」ではなく、3-2-1 の中の1つの層として位置付けます。
編集部の防災構成
- NAS(Synology DS1522+)を2階の頑丈な棚に設置
- UPS(APC BR550S-JP)で停電対策
- オフサイト1:Backblaze B2(全データの夜間バックアップ)
- オフサイト2:pCloud Family(家族写真の主要分)
- 重要書類はスマホのオフライン領域にコピー
- モバイルバッテリー 20,000mAh を常備
これで「家が全壊しても、海外のクラウドからデータは戻せる」状態になります。
まとめ
データ防災は 3-2-1 ルールの「オフサイト」を真面目に組むことが核心。災害時にアクセスできる準備も合わせて考えると、実効性が大きく変わります。構成は無料の構成診断で確認できます。